それは日比谷公園を散歩していた時のことです。
ここ最近は環境や進路で迷い、迷う自分に自己嫌悪して人に話せなくなって、引きこもってしまう。そして迷うというあっぱれな袋小路におりました。
それでもカメラを構えながら歩いていると、
一対のハニワ夫婦が突然現れたのです。
ハニワ夫婦はどうやら、奥にあるちんまりした住居で生活を営んでいるようでした。
身の丈を自在に変えられるとは。
さすが古代人、そのポテンシャルたるや半端ありません。
まじまじとハニワ夫婦を見ていると、後ろからグレーのワンピースを着たお姉さんがやってきて、友人に話しかけました。
「あ、はに丸!(写真)撮ろ!はに丸とエロいおねえさん」
「え?はに丸にエロいおねえさんなんていた?」
私の心の声を代弁するかのような友人の言葉。私は動揺しました。
はに丸。
彼は確か大昔にN○Kで放送されていた、「おーい!はに丸」の主役だったはず。
名前の通りハニワのはに丸はお供の馬ハニワと一緒に、色々なことを学んでいく内容だったはず。
わからないことがあると「はにゃ?」と首をかしげる、愛らしい技で人をメロメロにする、人たらしホルダーのハニワ。それが彼、はに丸王子でした。
しかし、今、人に写真を撮ってもらっているグレーワンピのおねえさん。彼女の中ではエロいお姉さんとセットになったハニワ、それがはに丸王子なのです。
私の知識不足かもしれない。
そう思いました。
幼児向けでヒットしたのを受けて深夜枠でエロいお姉さんとセットになった番組が放送されていた可能性はないのか?
しかし、天下の○HK。そもそも、そういうジャンルを放送するのだろうか?西郷どんと水曜どうでしょうくらいしかテレビを見なくなってしまった私にはさっぱりわかりません。ちなみにどちらの番組も友達に教えてもらって見るようになりました。
はに丸は、
あの、はにゃ?ほにゃ?と言っていた、可愛らしいハニワは、
はに丸ジャーナルの看板をはる、ジャーナリストになっていました。
大人が得意な表面的な答えは「はにゃ?」と受け流し、聞きにくいことは核心を突く問いをぶつけてしまう!
ジャーナリストに、はに丸は成長していた。
可愛いはに丸はどこにいったのか。
一体彼になにがあってジャーナリストになったのか。ジャーナリストはに丸、もちろん番組のターゲットは昔はに丸に親しんでいて、いまや成長して家族をもつようになった世代でしょう。
ジャーナリストはに丸は、はにゃ?は使うことがあっても、昔のはに丸ではない。この劇的な変化をどう受け止めればいいのか。
はにゃ?だけのはに丸とジャーナリストはに丸。ついでにエロいおねえさんと一緒にいるはに丸。
どれもはに丸なのに。
ならば、想像してみるしかない。
昔、「おーい!はに丸」で主役に抜擢されたはに丸。
彼は若年齢にして、あっという間に世間の人気者となりました。馬のひんべえ、同じ年頃の友達。
撮影の世界とはいえ、ハニワ王族の長男として生まれ落ちた彼には、すべてが真新しく、新鮮だったのです。
やがて、放送は大人気のうちに終了。
子役のはに丸には、次の仕事のオファーはおとずれませんでした。あっという間に日常に戻ってきたことに愕然とするはに丸。
彼は人間の子と同じように大学まで進学し、やがて就職活動で壁にぶつかります。
昔働いていた放送局を志望した彼は、採用面接でハニワであるという理由で落とされてしまいます。なぜ、ハニワだからといって自分は落とされたのか。自分はこれまで警察沙汰になるようなことなどしてこなかったし、条件は人間とおなじであるはずなのに。
そもそも人間社会でハニワとして生きるとはどういうことなのか。
アイデンティティーの問題に遅蒔きながらぶつかる、はに丸。
就職に失敗した彼は、一時期荒れました。その時にエロいおねえさんとも仲良くなります。
しかし、どんな時も傍らにいてくれて馬のひんべえや大学時代の人間の友達に励まされ、はに丸はふたたび、ベンチャーの通信社に職を得るのです。もちろん、正々堂々と、ハニワとして。
そこであっというまに出世の階段を登ったはに丸。かつて自分をハニワであるという理由から採用しなかった放送局から、ジャーナリストとしての出演オファーがやってきたのでした。
という流れかもしれません。
はい、妄想です。
しかし、どんなに状況が変わったとしても、自分が大きく変わらなければ生き残れなくなっても、自分自身の根っこを偽っては歪んでしまうでしょう。根っこだけは変わらず、その人をその人たらしめるものだから。はに丸がハニワであるということのように。
なぜかはに丸について熱くなりました。
あああ、歪んでる(笑)