雨の日が続いている。
真冬の雨には凍えてばかりだった。
身体は冷えるし、ヒートテックを着込んでいても冷気はあちこちから入り込んでくる。
外になんかでないで、家に閉じこもっていたくなる。人と会うのもなんだか気が進まない。心までとじこもりがちだった。
今の雨はちょっと違う。
雨に濡れても、凍えたりしない。
マフラーを首から外したくさえなる。
冬の間らずっと巻いていて、それ抜きの生活は考えられなかったくらいなのに。
1月、2月とは明らかに違ってきている。
そして、変わってきたなあと違いを見つけるたびに、思わずにいられない。
被写体になってくれませんか?
と。
一眼レフとの出会いのきっかけは以前にも書いたことがある。
その後も人様に借りっぱなし。
インフルエンザにかかったり、指先やつま先が冷たくてどうしようもなかったりと、なにかと冬は気持ちも身体も縮こまることが多い。
それでもカメラは私に、いつもだったら見逃しただろう景色を見せてくれる。
友達からも撮影を頼まれることがあり、私なんかでいいのかと相当怯えながら臨んだ。
構図がとか、技術が、経験が、マイナス要因ばっかり頭の中に浮かんできた。
ちゃんとしたものを提供できなかったらどうしようととっても怖かったけど、それでも機会をいただいたので下手くそながらも撮影させていただいた。
撮った写真をみた時に驚く。
そこには友達の手の血管まで写っていた。
こんな細部まで捉えてしまうんだ!
私は普段、あまり人の手の血管まで意識したことはない。
そもそも血管まで意識するってどんな状況なんだ、血管マニアか?とも思うけれど、
カメラはきちんと、血管まで記録していたのだ。
また、カメラは感覚も変えてくれるようになった。
いつもお世話になっている美容室で聞いた話だった。
指が膿んで腫れてしまい、痛い治療をしたという。
男性は職業上、手をよく使うので、いわば商売道具が使えないに等しい。
しかし、そんな男性に、看護師さんがものすごく丁寧に治療してくれたのだ。正に地獄に仏だったという。
話の主は男性だ。
商売道具が使えなくてうちひしがれている自分。そんな時に、美しい女性(想像補正)から文字通り手を差し伸べられた。
仕事上であることは百も承知している。
それが今後、どうこう、ということでもない。
ただ、
単純に、
し・あ・わ・せ
だ。
し・あ・わ・せ
なのだ。
そして舞い上がる!
そこまで脳内ムービーが再生された。
惜しい!その瞬間をカメラに収められればなあ!
そう、思わずにはいられなかった。それでも脳内ムービーは続きっぱなしで、おもわず叫んでしまった。
「よかったですねー!最高ですよね!」
一瞬、沈黙。
そして。
「あはははははは‼」
美容師さんは笑いだす。
どうやらツボにはまったらしい。なにか変な生き物と認められたのかもしれない。
撮りたい瞬間を逃して悔しがるーーなんて感覚は以前ならなかった。
一眼レフカメラは、普通なら見逃したであろう景色を見せてくれる。
尚且つ、感覚も変えてくれている。
だからこそ、思ってる。
被写体になってくれませんか?