通勤電車遅延のテロップを眺めないようにしても、電車は遅延している。
確定申告があるのを見ないようにしても、ポスターは訴えてくる。
くしゃみばかりでるのを気にしないようにしても、やっぱりくしゃみする。
体重が増えたのを忘れようとしても、……いや、これはまた忘れよう。
花粉症が襲来した。
風邪かと思いきや、喉も痛くないし熱もない。
インフルエンザを疑っても、熱も上がらない。
まわりに胡椒を振りまきながら歩く人はいない。
おかしいなぁと思いつつ。職場にいたらくっしゃん、くっしゃん。
静かな職場で一人街宣車。
家に帰ってもはくしょん、はくしょん。
家の中心で哀を叫ぶ。
マスクメガネ仮面となりつつ、残った露出部分、目力だけで相手を魅了しなくてはいけない。
メガネ曇ってるけどな!
恋愛シーンにおける氷河期の訪れ。
心まで凍えそうだ。
しかし。
許可もしていないのに、勝手に人の住居や体に侵入する。
一緒にいてと頼んだわけでもないのに四六時中つきまとう。
これら数々の所業、やつらは目に見えない大悪人。
ゾンビだ、ここで花粉症をギガゾンビと命名する!
なんでギガゾンビなのかはなんとなく!
ほら、映画大長編ドラえもんのび太の日本誕生に出てくるラスボスですよっ。
ギガゾンビと比べたらアロニー君と息子アロニー君なんてまだまだまだまだかわいいっ!!
ギガゾンビはその凶悪っぷりを仕事中にいかんなく発揮してくる。
このルビは促音なのかどうかを確認しなくてはいけない!
ギガ〜! くしゃん!
1行空いているか確かめよう
ギガ〜! くしゃんくしゃんくしゃん!!
これは〓(ゲタ)にな……ギガ〜!はっくしょん!
ギガギガギガギガギガ〜〜〜〜!!
〓〓〓〓〓〓ぁぁぁぁ!!
ああああぁ!うっとぉしぃぃぃ!
あんたがギガ〜ってなるたびにこちらは集中力ぶっちきれになるのよぉぉぉ。
こんなにギガギガやられたら仕事できないだろうがぁぁぁ!!
腹立ちまぎれに左手でクリ○ックスのフェイシャルティシューを取ろうとしたら、のこり1枚だった。
鼻が止まらないうえに命綱のローション入り保湿ティシューも途切れた。
ううう。もはやこれまでか。
仕方なくクリ○ックスのHPぐぐる。
そして刀折れ矢尽きた私の目に飛び込んできたのは。
一日二十四時間をティシューのやさしさを求めて半世紀を過ごしてきた私たちには、「やわらかさ」の到達点はないのです。日々さらなる「やわらか さ」の高みを求めて・・・。
1日24時間、ティシューのやさしさを求めて50年を過ごしてきたですって?
わたしがギガゾンビの襲来に苦しんでいる時間よりもはるかに長い時を?
ティシューのやさしさを求めて?
50年!
なんたるやさしさに対する執念!
わかった。
わかったよクリ○ックス。
あなたのティシューのやさしさを求める気持ちに目を覚まされた。
ギガゾンビの襲来なんかに負けちゃいけないね。
やつらがたとえ、髪の毛にまとわりつき、穴という穴に勝手に入りこみ、薬やマスクを買うように支配してこようとも、それは大したことではないんだ。
大事なのはそこでくじけずに顔を上げて探求することなんだ。
まさか自分の半径50センチに勇者がいるなんて気付かなかった。
勇者とは勇敢な者ではなく、人に勇気を与えられる者のこと。
わたし、はりきるよ、クリ○ックス!!!
ありがとうクリ○ックス!がんばってクリ○ックス!
はい、失礼しました。
花粉症にもめげずはりきりまっしょい。