きっかけはちょっとしたことの積み重ねだった。
「ポプテピピック」。つぶらな瞳をした二人の女の子がしちゃいけないジェスチャーでえががれている画像。今年に入ってから、書店で、SNSで、ネットでやたら目にする。なんなんだろう?どういう作品なんだろう。ニコニコ動画で1話無料配信中(無料に弱いのか?)ということで予備知識ゼロで観てみた。そして思った。
漢だ。
全編ゴリゴリのパロディアニメだった。遅刻しそうな女子学生(ポプ子)がパンを咥えながら家を飛び出して、角で人(ピピ美)にぶつかる黄金パターンから君の名はのパロディに繋がってはじまる。(しかもその後何か巨大なものが落ちてきて二人とも吹き飛ばされる)。パロディはパロディなのだけど、全部が全部元ネタをわかるわけもなく、どうしたものかと思っていた時だった。
あ、日高のり子さんの声だ!
後半は声優が変わっていた。長身の女の子ピピ美を日高のり子さんが担当していたのだ。そこから一気に気分が上がる。日高のり子さんと言ったらとなりのトトロのサツキだし、犬夜叉の桔梗だし、ふしぎの海のナディアのジャン君である。ベテラン中のベテランの声は変わらずよく通るいい声だった。
だから、となりのトトロのバス停でサツキがお父さんを待つシーンのパロディがすごく刺さった。元ネタではサツキ役の日高のり子さんがトトロ役となってポプテサツキに話しかけるのだ。(トトロにはなぜかモザイクがかかっている!)
ああ、なんだろう、この納得感。ふっと思う。そうだ、私がトトロのパロディを面白がるためにはいくつかの条件が揃っていなければいけないんだ。まず、となりのトトロの作品を知っていることが前提だし、サツキ役を担当していたのが日高のり子さんだという記憶も必要だ。さらに日高のり子さんの声がどんな声だったかも覚えていないと、ポプテピピックの中で出てきても一発でわからないだろう。私が全部元ネタをわかるわけもないと流してしまった他の場面もそのように構成されているのだろう。
ミステリーなんだ。ミステリーもので謎が腑に落ちた時の清涼感を最初から最後まで全力でポポプピテックは突きつけているんだ!なんて怖い迫り方をする作品をするんだろう、ポプテピピック。ものすごい熱量だ、ポプテピピック。でも、これはあまりに強烈すぎて観る人を選ぶんじゃないだろうか?どうしてここまでわかりにくい作りにしているんだろう。
ああ、違う。逆なんだ。
ポプテピピックのクリエイター達は熟知しているはずだ。全編パロディでストーリーがあるのかわからない構成をしたらどんな反応が起こるかを(しかも敢えて作品自体をdisったセリフまで言わせている)。どれほどのネガティブな意見がくるかを。でも、そこであえて切り込んでいる。徹底的にシュールにわかりにくく作り込んでいる。コミックス1巻の表紙のごとく、しちゃいけないジェスチャーでお客さんに挑んできているんだと思う。
覚悟とチャレンジ精神。
漢だ。
ポプテピピックを制作したクリエイターは漢なんだ。あぁ、私はてんで色々あまちゃんだ。このとんがった感、大事にしよう。いきなりぐさぐさ刺さってくる作品に出会えて私は幸せものです。コミックスも読んでみます。ずぶずぶ。
