もうずいぶん前に会えなくなった子がいる。
バスケが好きでいつも日焼けしていたあの子と、
学校生活が窮屈で絵ばかり描いていた私では接点がないはずだった。
やたらと敏感で人が怖かった私はたまにからかわれた。
逆襲した。
穏やかな気持ちで絵を描かせてほしかったのだ。
うるせーーーー!!
クラスの誰よりも大きな声で褐色のあの子は怒鳴りつけてきた。
男の子は大きい音にいらいらする性分だった。
教室の扉はもっと少しずつ閉めろ、くだらないこと(私たちのことだ)で騒ぐな、
なんだかんだで怒鳴っていた。
スポーツが好きだけど、静かに過ごすのも好きらしかった。
とくに親しい会話をすることもなく、私は中学でも男の子と同じクラスになった。
さすがに中学ではみんな大人びてくる。
以前のように追いかけっこをすることもなくなり、私は相変わらず絵ばかり描いていた。
いつからだったろう。
気がついたら男の子はずっと欠席するようになっていた。
月が変わり、季節が巡っても彼の席は主を待ち続けていた。
ある日かかってきた連絡電話。私はわんわん泣いた。
あまり話をしたことすらなかった。
ただ、もうこの世界に彼はいないのだということが、どうしようもなく重くのしかかってきた。
なんでいなくなるんだろう。
ずっと描いてきたはずの絵も、答えを教えてはくれなかった。
やがて大学生になった私に、親子ほども年の離れた従兄弟ができた。
私の背中で笑っていた従兄弟は、あっという間に彼の年齢を追い越していった。
そして今年、彼のできなかった大学受験に挑んでいる。
あなたは面白いやつだったよ。
活発なくせに、うるさいのが大嫌いだったね。
太陽と月が合わさったような感じだから、地球にいる私からあなたの姿を見ることはできない。
でも宇宙は広いのだし、どこかで輝いているかもね。
私は今でもうるさいよ。
もし今度会っても、怒鳴られる前に逃げるから。
それでもよければお茶でも飲もう。
ありがとう。
どうかずっとずっとしあわせに!