はじめに
雨が続いています。この春新しく進学した人、新社会人となった方、おめでとうございます。ジメジメと雨が降り続いて気鬱になりがちな方もおられると思うので、そんな方々に向けて自分が初めて就職した時の話を書いてみようと思いますぞ。
ぶっちゃけると職業名を言ってはいけない職業の方たち(ハリポタのヴォルデモートさんではありません)の定宿で働いた時のお話。ちなみに実話なので、書いてしまって成仏させる目的もある。
就職活動の失敗
当時の私は大学の卒業時に仕事が仕事が決まりませんでした。エントリーシート書いて、自己分析して、SPIで理数系の問題に沈没しつつ面接も受けた。
学校は片道2時間半かかるところにあり、馬鹿長い通学時間をひたすら読書にあてて過ごした4年間。就職浪人できるような環境にはなかったし、とにかく正社員の仕事がなかった。
なんとか職業安定所で仕事を探し、無職からほうほうの体で中途採用の形で入ったのが都心のど真ん中にあるホテルでした。
なんか土地の景色がちがう
当時は働き口を見つけることに必死でした。学校まで行かせてもらったのにというのも大きかった。働けるならなんでもいい。それくらいに追い詰められていた。
学力試験のようなものはなく、面接のみでその後採用連絡をいただいた。うれしかった。でも、駅からホテルまで歩くにつれて土地柄ががらっと変わっていってどこか荒んだ雰囲気に変わっていったことが印象に残っていた。ここで気づくべきだったと思うけど、当時はわからなかったんだな。
初めての就職、同期の女性
中途採用なので、働くことが決まってから、働き始めるまでに日数はあかなかった。研修期間ということで、同期に採用された女性とフロントに立つことから始まる。
同期の女性は同い年くらいの小柄の女性だった。Kさんというその女性は、地方の出で、東京で仕事が決まって収入の道がひらけたので嬉しい、と喜んでいた。給料を見込んで、すでに家賃ん万のところに住んでいるそうだ。働けることになってひと安心しているのはこちらも一緒。うれしかった。
業務説明を受けるものの、そもそも観光業界を志望していたわけではなかったので、サービス業のなんたるかも全くわかっていなかった。上司の男性は奥側にいて様子を見つつ、サポートするやり方をとっていた。
初日は男子風呂に突入から始まった
しかし、徐々に疑問符がたくさん付くようになった。たまにくるお客様の面相が、見慣れているものと違う。街中で向こうから歩いてきたら、さりげなく距離をとってすれ違うだろう雰囲気を醸し出していた。なんかおかしい。なんかおかしいと思いながら初日の勤務時間も終わりに近づいていたころ、バスタオルの備品が揃っていないとのクレームが入る。
バスタオル一式を届けて欲しいと上司から渡された。届け先は男子浴場で、脱衣所で◯◯号室の◯◯様と言えば本人がいるからと。今から考えればかなり異様だ。こちらは入社1日目の女性である。他に男性スタッフはいなかったのかと思う。
とはいえ、こちらもすっとぼけているので、仕事の意欲に燃えていたので特に疑問も抱かずに男子風呂の脱衣場に突入した。
◯◯号室の◯◯様〜。
◯◯号室の◯◯様〜。
幾度も呼んだけど返事がない。
この時見た風景はお客様の頭から背中あたりくらいなら覚えているが、そこから下、いわゆる下半身あたりは思い出せない。脳みそが記憶するのを拒絶してるんじゃないかと思う。
仕方ないので、浴場の扉をがらっと開けて名前を呼んだ。よくよく考えると私の行動ほうが異様だったと思う。声を張り出してお客様の名前を呼ぶ。
◯◯号室の◯◯様〜。
◯◯号室の◯◯様〜。
反応がない。
お客様から驚いたような、変態を見るような眼差しが私に注がれた。いたいっ。
彼らの背中には立派な模様が広がっている。その時の私はタオルセット一式を届けることしか頭になかった。けれど、端から見れば制服を着た痴女が男子風呂に突入し大声を出している構図である。なんなのこれ。
◯◯だ、と後ろから声がかかった。
最初から答えてくれよと思いつつ、タオルセットを渡す。お客様の視線を背中に感じつつ、さっさと引き下がった。これが社会人としての洗礼ってやつなのかい?
そこは昼と夜の顔が違う土地だった
それにしてもだ。ここ、もしや普通と違うのでは???とさっき見た光景を思い出しつつ、頭に疑問符をたくさんつけながら夜道を帰っていった。
ホテルの周辺は昼間ですらどこかうすら寂れた雰囲気だけど、夜になるとはっきり治安が悪いところなのだとわかった。怖くなって早足であるき、大きな商業施設のまばゆい光や交差点、せわしなく歩く人の群れが見えてきた時、初めて安堵した。こうして私の社会人1日目は男子風呂に突入して幕を開けた。
なんか思わず長くなったので、前後編にしてみようと思う。次は後編で、未だに解けない謎と説教と退職した話です。続く!!