たけのことダークホース塩辛

過去投稿分(2016年12月~2023年12月)
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自粛期間は延長になったけど、公園でウォーキングをする日課は続けています。
公園といっても人工の沼があり、川沿いのサイクリングロードに繋がっていて、鶯が愛らしい鳴き声で陣取り合戦をしていてすごく賑やかなんですよ。自然が豊かすぎて雛の死骸やら自転車のサドルまで落ちているけどね。

園内にはちょっとした竹林があって、注意してみると小さなたけのこがちょこっと草の間からのぞいている。たけのこさんが動物から身を守るための丈夫な皮に身を包まれて、少しだけ頭を出している姿を見るとほっこりしていました。

翌日、産毛だけを残し、たけのこさんは抜き取られていた。皮だけ残して本体はなくなっている。

私が衝撃を受けたのは、公園なのに勝手にたけのこさんを取っていくことではない。
取ったたけのこさんの皮をはいでそこらへんに捨てていくことでもない。

 

掘り方が下手っぴなことだよ。たけのこさんはちゃんと道具を使って根ごと掘るものだよ。残された部分が腐ってしまう。翌年になると同じ場所に生えないし、そうすると竹の全体数が減ってしまう。一方的に破壊されたたけのこさんのあとを見てとても悲しくなりました。

今の自分が良ければよし。それだとなにも次には繋がっていかない。残るのは芽の出てこない土地だけ。自分がしてきたこと、しようとしていることははちゃんと後に続く人たちのためになることだろうか。たけのこさんを通してそんなことを考えた。

たけのこさんはすぐ生えてきた。「雨後のたけのこ」の言葉があるけれど、あれは本当で、雨が降った翌々日くらいになるとそこら中にたけのこさんが生えた。そして取られた。
生えて取られて生えて取られての繰り返し。芽吹いて成長する時期の植物の勢いはすごい。今をこの時と一気に成長してくる。すこし間があいて公園を通ると掘り返されなかったたけのこさんは成長していた。

こんなにちいちゃかったのが。

こうなって。

こうなった。

あの小さい、産毛に守られたたけのこさんが、無骨な竹戦士に変貌している。竹戦士候補生だ。新米よ新米がきたわ!とか竹戦士先輩たちはささやいているかもしれぬ。

たけのこさんはこの後、皮を取りどんどん大人になっていくのだ。
なんていえばいいのだろう。
気持ちはひよこから鶏に変わる姿を目の当たりにした時とおんなじ。
もうずっとたけのこさんのままでいてくれないかなあ。
あの草の間からちょこんと顔を出してくれたままでいてほしいなあ。
もうずっとこどものすがたのままで大人になってくれないかなあ。

おとなの階段のぼる君は竹デレラ。

嬉しいけど寂しい。

寂しいけど嬉しいよ竹デレラ。

嬉しいと寂しいの気持ちが入り混じったので、竹の子ご飯を炊いた。(買ったたけのこさんです)
私も次につなげる、手渡せることを念頭においてはりきろう。たけのこご飯を食べながらそう思った。

ちなみに若干塩味が足りなかったらしく。一口食べた家族はそっと塩辛を取り出してご飯の上に載せていた。この春、私のたけのこ物語は塩辛という食卓のダークホースに脅かされている。

たけのこさんに。たけのこさんを愛するすべての人に幸あれ。

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