小麦粉ネックレスをほぐすときに私のおもうこと

過去投稿分(2016年12月~2023年12月)
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「謝らなきゃいけないことがあるの」
家に入るなり、母から差し出されたのは銀のまるい固まりだった。よくみるとそれは私のお気に入りの(元)ネックレス。しかも値段も一番高いもの。そこにもうひとつのネックレスがこんがらがって固まりになっている。なんでもイオンの無料バスに乗っておでかけしようとして、私のネックレスを借りようとしたらもうひとつのものが引っかかってしまい、あせって戻そうとしたらしい。その結果が今の成れの果てだった。

 

こうして私は真夜中にネックレスをほぐすという作業に没頭した。

 

とにかくきつくがんじがらめになっている。焦っていろんな方向に引っ張ったりしているうちにどんどん絡まっていったのがわかる。しかし、なにかがおかしい。全体的にシルバーがくすんでいるし、台座とジュエリーの間も白い何かがびっしりついている。絡まりをほぐそうとするとパラバラパラパラと落ちてくる。机は白い粉だらけになった。あきらかにおかしい。

「あ、小麦粉がいいって調べたら書いてあったから」

こうして私は真夜中に小麦粉まみれになったお気に入りのネックレスをほぐすという作業に没頭した。

手と目を動かし続けることしばらく。ネックレスは元の形がわかるまでにほぐれた。突然湧いた斜め上の問題に理不尽を感じながらも直した。あとはお気に入りのネックレスに絡まっている(とわかるようになった)部分をほぐすだけとなる。

あとちょっと、のはずだった。私は作業をしながら、それは見立てが甘かったと気づく。こっちの方が一番厄介なのだ。絡みついているネックレスは硬くてそしてチェーンが細くて細かいためどこをどう動かせばほぐれるのかわかりにくい。しかもがっちり固まっていて動かしてもなかなかほぐれてくれない。気がつけば時刻は4時半になっている。7時40分には出なくてはいけない。もう寝なくてはいけなかった。

こうして私は真夜中に小麦粉まみれになったお気に入りのネックレスをほぐすという作業に5時間半没頭し、それは現在もほどききれていないまま机の上にある。解決しきれていないままである。

無駄な時間だったのだろうか。本来は睡眠に当てるはずだった時間を降ってきた斜め上の問題にひたすらむきあうことに費やしたのは無駄なことだったのだろうか。そうは思っていない。だってがんじがらめになったネックレスは私にとって大切なものだったから。もう身体動かして頭使って動かしていくしかない。ほかのことだってそうだ。予想をしていないことばかり起こるのが普通だって慣れてしまって、真剣に遊ぶくらいがいいんだろう。がんじがらめになったネックレスは必ず元に戻すことにする。でも小麦粉にネックレスってねえ。

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